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マイホームの火災保険で悩む「家財補償」。300万円で足りる?いくらかければいいの?

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マイホームの万一に備える火災保険は、対象を「建物」と建物内にある「家財」に分けて補償を考えます。「建物」については当然に契約するものの、「家財」については補償額をどうするか、そもそも契約すべきかについて悩むケースがあるかと思います。「家財」の補償範囲や補償金額の設定について、結婚や出産で家族が増えたときを想定し、安心できる補償の考え方を解説します。また、よく言われる300万円の補償金額設定の真偽についても検証してみましょう。

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コラムサマリ

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  • 災害時にかかる家財補償は意外とかかる。火災保険は「建物」+「家財」で検討する。
  • 気になる「家財補償」は、家財すべてを補償するわけではない。補償範囲を確認する。
  • 家財補償の補償金額は300万円でだいじょうぶか。目安を確認し検討する

ご契約にあたっては、必ず「重要事項説明書」をよくお読みください。

ご不明な点等がある場合には、保険代理店までお問い合わせください。

本文

意外にかかる災害時の家財補償。火災保険は「建物」+「家財」が正解

火災保険というと、建物全体の補償と考える方は多いようです。もし、大切なマイホームが火事になってしまったら、建て直すための費用を保険で備えるという考えに間違いはありません。

ただし、建物内にある家具や電化製品、衣類などの「家財」に対する損害は、「建物」を保険の対象とする火災保険だけでは補償されません。

自宅を見回してみると、テレビ、リビングソファ、テーブル、ラグ、冷蔵庫、電子レンジ、洗濯機……と正確な金額は記憶になくとも、それぞれを足していくと、結構な購入金額になるのではないでしょうか。万一の場合に、「建物」は保険で建て直すとして、生活を再開するためには「家財」の補償についても備えておく必要がありそうです。そのためには、火災保険を「建物」「家財」の両方をセットで契約しておきましょう。

300万円では足りない?家族の分だけ家財を賄う費用も増える

火災保険の家財補償を考えるとき、その補償額は「300万円でいい」と言われることもありますが、実のところ、その根拠は不明です。おそらく独身時代、ひとり世帯の賃貸契約などで備えるべき家財の補償金額と推測します。借りる部屋の広さにもよりますが、実家に荷物を残しつつ、生活に必要な家財のみを持ち込む単身者は多いでしょう。とすると、300万円という額は妥当とも言えます。

また、別の観点からみると、賃貸契約の際に契約する「入居者向け火災保険」は、家財のほか、借家人賠償責任が契約されています。借家人賠償責任は、借家人(入居者)の責任で部屋に損害を与えてしまった場合に保険を活用することで賠償するものです。入居者にとっても役立つ保険なのですが、むしろオーナーさんのリスク対策としての意味合いが強いでしょう。保険料を負担するのは入居者です。少しでも負担を抑えるために、財産(家財)の補償は、低めに設定されているという見方もできます。

結婚して2人の生活が始まると、住居はそれなりの広さが必要になりますし、冷蔵庫や洗濯機など大きな容量への買い替えやグレードアップにより、居室内の家財の価額は上がるのではないでしょうか。さらに子どもができると、おもちゃや衣類、成長すれば、学習机やランドセルなどが増えることが想定されます。家族が増えれば、リスク対策としての家財の補償額も上げる必要がありそうです。

家財補償は、家財ならなんでも補償してくれるの?

火災保険の家財補償では、実際にどの家財の損害を補償してくれるのでしょうか。実は家屋に収められていればどんな家財でも補償されるわけではありません。家財補償の対象について、確認してみましょう。

家財補償の補償対象となるもの

火災保険で補償される「家財」とは、基本的に、自宅内で動かせる生活用動産です。具体的には、家具や電化製品などのほか食器、衣類やバッグ、靴、スマホやパソコンなどが対象となります。建物が所在する敷地内の物置や車庫内の家財も含まれるのが一般的です。

家財補償の補償対象に含まれないもの

一方で、現金や小切手、株券などの有価証券、パソコン内のデータ、仕事で使う備品や帳簿、などは対象外です。またクローゼット、畳・建具など建物に定着していて動かせない物は、建物の付属設備として「建物」に含まれるため、家財としては補償されません。自動車については、自動車保険で別途備えるべきとされています。ペットや植物についても、残念ながら対象外です。

家財補償はどんなときに補償されるの? 

火災だけでなく、落雷や台風などの自然災害のほか盗難や水濡れなどで家財が損害を受けた場合にも、家財補償にて補償されます。参考までに、以下のような事故例が挙げられます。

対象となる事故の例

▽火災リスク:火災、落雷、破裂・爆発による損害

・事故例:近隣で落雷が発生し「テレビ」が映らなくなってしまった。

▽風災リスク:風災、雹(ひょう)、雪災による損害

・例:台風による強風で窓ガラスが割れ(建物の補償)、吹き込んだ風雨により「家具」が倒れ、壊れた。

▽水災リスク:台風などの豪雨による水害からの損害

・例:ゲリラ豪雨で床上浸水となり「家財」が水浸しになってしまった

▽盗難・水濡れ等リスク:盗難や給排水設備に生じた事故による水濡れなどによる損害

・例:空き巣の被害に遭い「電化製品」を盗まれた。

 例: 排水管が破損し、水を被った「電化製品」が壊れてしまった。

▽破損等リスク:上記以外の偶然な事故による損害など

・例:遊んでいた子どもが「テレビ」にぶつかり、倒れて画面が壊れてしまった。

上記は、それぞれリスクごとの事故例ですが、補償の支払い対象となるかについては契約時に選択したプランによります。つまり、水災リスクに対応していない契約では、床上浸水で損害が生じたとしても、保険金を受け取ることはできません。

なお、地震・噴火、またはこれらによる津波を原因とする損害は、地震保険で補償されます。地震保険は、単体では契約できず、火災保険に付帯する必要があります。地震の揺れにより食器棚のグラスが損壊する被害などが想定されます。大規模地震の発生リスクは高まっているとされますので、地震保険の契約も検討をおすすめします。 

家財補償の補償金額は、どう設定すればいい?目安はあるの?

家財補償の補償金額を、一律に300万円とする合理的な理由がないことは、すでに説明をしました。特に家族が増えれば家財も増え、収納する居住空間も広くなるはずです。居住空間の面積は家財の収納量に影響しますので、補償金額を考えるときに参考になりそうです。

以下は、保険会社のパンフレットからの抜粋です。持ち家もしくは賃貸住宅における面積をもとにした「家財簡易評価表」です。家財の取得金額を検討する目安として参考になるでしょう。

家財簡易評価表

建物所有形態~33㎡未満33~66㎡未満66~99㎡未満99~132㎡未満132㎡以上~
所有

580万円

960万円1,210万円1,580万円1,930万円
賃貸350万円640万円900万円

1,150万円

1,420万円

※高額貴金属等の評価額は含まれておりません
出典:損害保険会社パンフレットより抜粋(2022年10月1日以降始期用)

上図からも、引っ越しの可能性ある賃貸物件よりも、将来的に住み続ける持ち家のほうが、家財の再調達価額が上回ることは納得できます。あくまでも目安ですが、80㎡程度の自宅であれば、1,200万円程度の補償金額が妥当ということになります。

なお、補償金額は、100万円単位(保険会社によって50万円単位など異なる場合あり)で設定します。

実際の生活再建をシミュレーションしてみる

いずれにしても、家族で生活するマイホームの家財の補償金額は300万円では足りないのではないでしょうか。まずは、現在の自宅内にある家財について、再取得のためのおおよその評価額を計算してみましょう。

家財の補償金額は、上記のような「家財簡易評価表」をもとに、今後の家族構成などをふまえて上乗せして設定することが一般的です。ただし、あくまでも参考にすぎず、居住エリア、働き方、趣味やそれぞれの価値観によっても大きく変わります。

万一の事故の場合には、補償金額を限度として、免責金額(自己負担額)がある場合は差し引いた実際の損害の額が補償(保険金として支払い)されます。補償金額は「損害が発生したときに同じものを買い揃えるとしたら」という再調達価額の視点で考えますが、被害に遭う前に保有していた家財をすべて買い揃えるかというと、必ずしもそうとは限りません。生活再建を前提とすると、新品でなくとも中古のものなど代替品で足りるかもしれません。

補償金額を高く設定すれば、もしもの場合でもその範囲内で家財を揃えることができ、手厚い補償となりますが、保険料負担は大きくなります。リスク対策とともに家計とのバランスも大切です。

2022年10月より火災保険の保険期間は、それまでの最長10年から最長5年に短縮されました。期間が短くなったことで、今後の生活の変化が予測しやすくなったのではないでしょうか。将来をふまえた上乗せ幅も、それほど大きく捉える必要はないかもしれません。

まとめ

大切なマイホームを守るためにも、万一に備えて、建物だけでなく家財についても、火災保険の家財補償で備えておきたいものです。特に今後家族が増えて家財が増えていくことを想定するなら、家財補償の補償金額はある程度大きな金額で設定する必要があります。家財簡易評価表などを参考にしつつ、実際の家財の状況から検討しましょう。

補償金額を考えるとき、必ずしも同等の新品購入を前提にする必要はないかもしれません。損害が発生した場合に1日も早い生活再建ができるためになにを優先するべきかについても、家族で話し合っておきたいものです。

この記事の執筆協力

執筆者名

大竹麻佐子

執筆者プロフィール

証券会社、銀行、保険会社など金融機関での勤務を経て独立。相談・執筆・講師活動を展開。ひとりでも多くの人に、お金と向き合うことで、より豊かに自分らしく生きてほしい。ファイナンシャルプランナー(CFP©)ほか、相続診断士、整理収納アドバイザーとして、知識だけでない、さまざまな観点からのアドバイスとサポートが好評。2児の母。

募集文書管理番号
0216-29A1-B22210-202303

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